2番目じゃなくて、2度目の恋


すぐに分かった。


━━━━━嘘をついてる。


彼女の癖とも言える、その仕草。
出会ったその日に気づいたことだ。


嘘をつくときは、目を逸らす。


なんで嘘なんてつくんだよ。
本当の恋人じゃないのに。
好きな人なんていないくせに。
だったらちゃんと本当のことを言えばいいのに。
そんなことで俺が傷つくとでも思ってるのか。


「もう嘘はつかなくてもいいんだよ」


解消するならなおさら、つまらない嘘は必要ない。
これ以上無駄に嘘をつくことなんてないのだ。


そう思って言った言葉を彼女はどう受け取ったのか、何故か動揺したような表情に変わって再び俺の目を見た。


「半分本当で、半分嘘」

「…………え?」


意味が分からずに首をかしげた俺に、彼女は半分だけ見える顔でニコッと笑った。


「ナントカさんを本気で好きになる前に、解消したいだけ」


ナントカさん?
なんだそれ、誰のことだ?


「もう2番目は嫌だから。だからごめんなさい。偽の恋人は、違う人を探して」


その言葉とともに、佑梨の顔が視界から消えた。
モスグリーンの、無機質なドアがバタンと閉じられたのが分かった。


そして、閉じられたドアを見てなんとなく感じた。


恋人ごっこは、これで終わり━━━━━。












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