不思議なお客様
「こちらでお休みになっていてください。」
「あ……はい。ありがとです。」
私は暖炉の近くにあるソファに座った。
(このソファ、フワフワしてて座り心地いいけども、なーんか足りないんだよね……)
なんとも不思議な気持ちにかられる。
「紅茶をお持ちしました。」
「わ!申し訳ないです…」
「いえ、唯子様は只のお客様ではないので。」
「え?ってことは……」
「はい、存じ上げております。」
「そ、そうだったですか……」
「はい。雪子様は私の恩人でございます。」
「……」
それから、遣いの人からいろいろ話を聞いた。
雪子先輩は、当時19歳で、ここのお屋敷の所有者であった。そして、雪子先輩には特別な霊能力があった。
それは、悪霊の浄霊ができるということだ。お経とか不動明王とかも唱えない。
只、悪霊と2秒間、目を合わせることで、浄霊できる。
ただし、その能力には犠牲も必要である。雪子先輩の寿命だ。一年。たった一年だけだと思うだろう。
だが、日本中には悪意を抱いて死んだ霊が沢山いた。
たかが一年を積み重ねれば60年、100年にもなるのだ。
雪子先輩はそれを恐れることなく能力を使い果たした。
そして、ついに……
「雪子先輩はすごい人だったのですね……」
私は、雪子先輩に憧れを抱いた。
(私も、雪子先輩みたいにまっすぐな人になりたい)