今すぐぎゅっと、だきしめて。
・あたたかいと言う事
「はあッ はあッ ……はあ……」
激しく上下していた胸をグッと押さえ、あたしは深く息をついた。
怖くて…
頭、真っ白になってつい走って来てしまったけど。
そう思いながら、あたしは手に持っていた懐中電灯を握りなおす。
勢いにまかせて、ここまで来たとはいえ、しっかり道なりに進んで来たようで
振り返ると、曲がりくねった獣道が続いていた。
その一寸先は闇。
和田君の焦点の合っていないような、虚ろな眼差しを思い出して
思わず身震いをしてしまう。
「…………」
でも。
一人の方が何倍も怖い。
やっぱり戻って和田君と一緒に行くべきなのかな……
ぽっかりと真っ黒な口を開けている道をジッと見つめた。
『後ろにいるの、誰?』
こんな時に限って、彼の意味深な言葉が
頭を反芻する。
……。
誰って……そんなの決まってるじゃない。
ヒロでしょ?
ヒロがあたしの傍に居てくれてるんでしょ?
だったらいいのに。
でも、あたしの声に
ヒロは何も答えてくれなかった。