今すぐぎゅっと、だきしめて。
「ヒロ……ねぇ……ヒロってばぁ……」
両手で体を包むようにしてあたしは小さな声で呼んでみる。
でも、やっぱり返事はない。
だけど。
そうなんだ……さっきから“ナニカを”背後に感じてるんだ。
この感じ……今に始まったことじゃない。
いつだっけ?
ヒロと行動を共にするようになって、ヒロ以外に違う存在を感じていた。
「……やっぱり戻ろう」
そう思って、あたしは意を決して来た道を戻ることにした。
――…でも
その時だった……
耳元をくすぐるような
頭の奥を痺れさすような
低い
曇った声が
あたしの鼓膜を震わせたのは……
『 カ エ シ テ 』