今すぐぎゅっと、だきしめて。

絡んだその視線を逸らせなくて
息も出来ないのに
心臓は勢いよく
全身に血液を送り込んでる。

そのせいで
目眩を起こしそうな感覚になった。



ドクン

ドクン

ドクン



「ずっとユイの傍にいんだけど、なんでか近寄れなかった」


え?


首をかしげたあたしを確認すると、ヒロは腕を組んで空を仰いだ。



「お前さ、変わった事なかった?」

「……か、変わった事?」

「そう。 微力なんだけどユイの中から違う気配を感じてさ。それが俺を近づけさせようとしなかったってゆーか…………わかんないけどね?」



ヒロはそう言うと、大きく息を吐いた。


違う気配……


ドクン!


その言葉に、すぐに浮かんだのはさっきのあの「声」。



あれは間違いなく女の人だった……
ヒロの事も言ってた。
あの声の主が言ってることが、もしこの「ヒロ」だったとしたら

あたしにヒロを近づけたくない……そう思ってるかもしれない。


「……」

ゾクッ


急に背筋が寒くなってあたしはブルッと身震いした。



「だけど、この和田ってやつのおかげで、その力も弱まって俺はこうしてユイの傍に来れた訳だけど」

「そ、そうなの?」

「うん。 引き寄せられた」



そう言って、ヒロは少しだけ首を傾げて笑った。

和田君……ヒョウイ体質って言ってたけど
この事だったんだ。


あの時の和田君…すっごく怖かったけど
今は、感謝…かな。


だって、ヒロを入れてくれたんだもん。
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