今すぐぎゅっと、だきしめて。

そう言ったヒロの左手がゆっくりと伸びてきて
あたしの短い前髪をそっと撫でた。


掻き分けるように指先がおでこに触れて
まるでスローモーションのように、頬へ降りて来る手。


愛おしそうに目を細めたヒロに
思わず胸がドキリと波打った。






「悔しいな……」




……え?


目を見開いたあたしを見て、ヒロは可笑しそうに頬を緩めると
空いていた手も伸びてきてさらにグイグイとほっぺが左右に引っ張られた。



「ら、らりしてんろ?」

「ぷっ! 変な顔」




訳わかんない。
あははって……呑気に笑ってる場合じゃないでしょー!

離せーー!



「痛いってば!」



半分涙目。
ヒロの手を掴んで引き離そうとするあたしだけど、ヒロは全然やめてくれなくて
手を離す変わりに、頬を挟まれたままのあたしはグイッと引き寄せられた。




―――……そして







「――好きだよ」


「……」




体の奥から搾り出すような
そんな、掠れた囁き声が耳に触れた。







うそ……




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