今すぐぎゅっと、だきしめて。

光の輪が大きくなって、あたしの体を包み込む。



やっと、やっと出られる……
なんだかよくわかんないけど、なんとか無事に帰ってこれた!


光の中には人影も見えてて、肝試しを終えた生徒達がまだそこに居ることがわかる。



その中に、奈々子と大樹を見つけた。

待っててくれたんだ!




ホッとして少しだけ歩く速度を緩めた、その時だった――


いきなり腕を掴まれて、あたしの視界は反転する。
振り向くより早く、唇が耳元を掠めた。


「他の男の体のまま……」

「……」


……え?



「…――したくなかったんだ」




そう聞こえた瞬間
唇にチクっと針を刺したような鋭い痛みを感じ、それは全身に広がった。




痛みで遠のく意識の中で
あたしが最後に見たのは、ユーレイヒロの顔。


その顔はいつもみたいに笑ってたのに

なぜか泣いてるように見えて、あたしは必死で彼に触れようと手を伸ばしてた。




痛くても、何でもいい……

あたし、ヒロに……




―――……触れて欲しかったんだ



初めてだよ……

胸が苦しくて、切なくて
でもどこかあったかくて……

ちっとも嫌じゃないの。



この気持ち、これって……
恋でしょ?





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