今すぐぎゅっと、だきしめて。


――――――……
―――……






「ユイ!……ユイ、大丈夫?」



頭が痛くて、重たくて遠くから聞こえるような
……そんな感じ。




「……ん」


ま、眩しい……
思わず手でその光を遮った。
目を覚ますと、奈々子の心配そうな顔がすぐそこにあった。


「ユイ! よかった……あんまり遅いから心配して探したんだよぉ」

「……な……なこ?」

「洞窟の近くで気ぃ失ってるから、ほんとびびったんだからなー」

「……洞窟?」


奈々子の横から今度は大樹が顔を出す。



そっか……
あたし……肝試しに参加して……
不思議な体験して……


和田君に憑依したヒロと一緒にいたんだ。


でも、あの時は洞窟じゃなくて出口近かったはずじゃなかった?






ここ、どこ?



明るい蛍光灯の光に照らされていて、暖かい布団に寝かされてる。
ギシギシ軋む体を起こすと、あたしは旅館の一室に寝かされていて
そこには、奈々子や大樹……それに担任の米山の姿もあった。


「安達……お前、気を失う程怖がりなら辞退してもよかったのに……」


そう言って、弱々しい声で言ったのはクラス代表の榎本。

辞退できたのか……


「怖かったわけじゃないよ」


まるでこうなったのは“自分の責任”みたいな顔をしている榎本。

てかさ、全然榎本が悪いわけじゃないのに。
こう言う責任感の強いところが、榎本をクラス代表に選ぶ理由なんだろうな。



「顔色もいいし……大丈夫そうだな。 念のために保健医の先生に来てもらうから、安達はもうこのまま休みなさい。 ほら、お前らも行くぞ」



そう言うと米山は榎本の肩をポンッと叩くと部屋から出て行った。


「ほんっとに大丈夫か?」


今にも泣き出しそうな榎本。


「もー大丈夫だってば! あたし単純だから寝ちゃえば忘れるしッ」


笑顔のあたしを見て、榎本は少しホッとしたように溜息をつくと「なんかあったら言えよ」と言って米山に続いて部屋を後にした。




あ……


その背中を見送りながら、あたしは部屋の隅にいる人物に気づいた。




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