今すぐぎゅっと、だきしめて。
「……和田く…ん」
頭で思った言葉がポロリと零れた。
和田君は腕組みをして壁にもたれながらあたしを眺めてた。
「……」
ただ、こっちを見つめたまま何も言わない彼の瞳が、あたしの何もかもを見透かしてる気がして胸がドキリと波打った。
ヒロ……じゃないね?
もう、和田君のその瞳の中にヒロを見つける事は出来なかった。
「おい、和田。お前がいながらどうしてこんな事になったんだよ」
心配する素振りも見せない和田君に対して、苛立ちをぶつけるように静かに言い放ったのは、大樹だった。
「言ったよな? ユイは引き寄せるって」
「……え」
なに…言ってるの?
大樹……
引き寄せるって……なに?
和田君はそれでも黙ったままで、大樹は眉間にシワを寄せて和田君に詰め寄った。
「何の為に、お前に頼んだか忘れたのかよ」
「大樹……やめなよ!」
大樹が和田君の胸倉を掴んだ瞬間、奈々子が二人を止めにはいった。
「……」
あたしはただそれを客観的に眺めていた。
あたしの事を言ってるのに
全然そんな気はしなくて……
他人事みたいだ。
「安達」