今すぐぎゅっと、だきしめて。

…………。


「……わッ! なな、な何!!?」

「しー、ちょっと黙ってて」

「え? な……」


暫く、和田君の唇は触れるか触れないかの場所にあって
首筋……それから耳の下あたりで静かに息を吹きかけていた。



「そういえばさ、安達……何連れてんの?」

「え?」



そう言って、和田君はゆっくり体を離した。


長い前髪の間から、あたしを捕らえる切れ長の瞳。
間近で見ると、それは少し茶色がかっていて
とても綺麗だった。



「永瀬ヒロってヤツが―――ずっと憑いてる」

「……!」



まるで囁くように、あたしだけに聞こえる声で和田君はそう言って
口元を緩めると、そのまますっと立ち上がった。




な……なんで……



口をパクパクさせて呆気にとられてるあたしを少しだけ面白そうに眺めると、和田君は言った。



「俺、憑依されてる時の事、だいたい覚えてるんだ。 ……霊自体に悪意があるかないかで違うんだけどね」


「………」



そう言って、和田君はあたしの後ろに目配せした。


彼にはわかるんだ!!
ヒロの気配が…………。



――…ん?


ちょ……
ちょっと待って?


さっきの事を覚えてるって事は…………


チラリと和田君を見上げる。
案の定すぐに視線は絡まって、和田君はさらにその目を細めた。



「安達? 真っ赤だよ?」



かあぁぁぁああ


やっぱり!
あたしと……ヒロが……そのキキ…キスした事も
知ってるって事だよね!?


ひええぇえーーー!

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