今すぐぎゅっと、だきしめて。
動き出した歯車
あの合宿から、一週間がたった。
どうしたんだろう……
今度こそ、成仏できたのかな。
あたしは、机に向かって苦手な数学の教科書を広げたまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
「……」
そうなんだ
“また”ヒロがいなくなった。
声も聞こえなければ、気配さえ感じない。
どこ行ったのよ……
ヒロの事、好きなんだって自覚したとたんこれだ。
やっぱり、ユーレイと恋愛なんて無理なんだよね……
ヒロもそれをちゃんとわかってたんだ。
だから、早くあたしと別れたいと思ったんだよね?
―――……辛いから
ピンポーン
その時、インターホンが誰もいない家に響いた。
「…………誰だろ」
いつもお母さんにまかせっきりだからなぁ
そんな事を考えながらのそのそと、階段を下りた。
「どちら様ですかー?」
ドア越しに尋ねる。
だけど、返事はなくてただあたしが鍵を開けるのを待ってる感じだった。
「…………」
もも、もしかして……泥棒とか!?
――…ゴクリ
やけに口の中が渇いてあたしは唾を喉の奥へ押し込んだ。