今すぐぎゅっと、だきしめて。


気を利かしたお母さんが、買ってきたばかりのちょっと高そうなゼリーと、冷たいアイスティーを運んできてくれて
小さなテーブルに並んで座ったあたし達はなぜか無言でそれを頬張っていた。



「…………」

「…………」




……なんだろ、この空気。

なんで大樹は何もしゃべらないんだ?



……う。
こんな時に思い出した。

あたし、大樹に告られてたんだ。


ドキン

ドキン


急に心臓が騒がしくなって、あたしは俯いた。


どうしよう……


動揺してる事に気づかれないように、チラッと隣の幼馴染を盗み見た。



立膝なんかしてる大樹。
その上に乗せてるのは、運動をしているせいで無駄な贅肉のない筋肉質な腕。

頬杖を付いていたその腕は、短い髪を時々いじる。

伏目がちの瞳に長い睫。


綺麗な横顔……。


これが、あたしの幼馴染。

そして、あたしを好きだと言った……大樹。


―――……ドクン!



……や、やだ。
何意識してんのよ、あたし!

大樹なんかにッ




「……え、えと、大樹ってうちに来るの久しぶりだよね? どれくらい来てなかったのかな」

「さあね。 んな事いちいち覚えてねーよ。 三年くらいなんじゃない?」


……む。
なに、その言い方!


「そ……そっか。 もうそんなに経つんだね!」

「そーだなぁ」

「……」

「……」


アイスティーのストローを銜えたまま、大樹はなぜか物思いにふけっている。


何か考えてるようにも見えるし……ただぼんやりしているだけにも見える。



「……あッ! そ、そう言えばこのゼリーどこのか知ってる?」

「は?」

「これだよ、これ!」



唐突のあたしの質問に眉間にシワを寄せた大樹は顔を上げた。

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