今すぐぎゅっと、だきしめて。
世間って本当に狭い。
ちぃちゃんの彼氏が、大樹のお兄さんだったなんて。
じゃあ、さっき大樹が言ってたあのカフェにお兄さんが良く連れて行くって言うのは、ちぃちゃんの事だったのかな?
それにしても……似合わない。
あたしはそう思いながら、目の前の二人を見た。
目が合った大樹のお兄さんは、ニコッと人懐っこい笑顔を見せた。
うッ!
なんか……苦手。
ちぃちゃん、どうしてこの人なのぉ?
大樹には申し訳ないんだけど、あたし好きになれそうにない!
「で、未来の俺の妹は何て名前?」
「あのですねッ! さっきからなんか勘違いしてるみたいですけど、あたしと大樹は別に…………」
「あー、照れない照れない」
「はぁッ?! ……だからッ」
そう言いかけたあたしの肩をグッと掴んで、大樹が前に歩み出た。
「ユイはそーゆうのじゃないし。 だいたいさ、兄貴には関係ないだろ」
「冷たいねぇー」
両手を挙げて困ったように笑った。
そんな実の兄を睨みながら、大樹は短い髪をクシャッとかきあげた。
はあー……
本当にこの人は、大樹のお兄さんなの?
まるで雰囲気違うのに。
……腕は似てるけど。
その時、今まで塀に隠れて見えなかったちぃちゃんの手元が顔を出した。
大事に大事に、その胸に抱えられたもの。
……?
それは、真っ白な花束――――……
――……カスミソウだった。