今すぐぎゅっと、だきしめて。

そっか。
そう言えば大樹のお兄さんもバスケやってるって言ってたよね。


てか、大樹。
本当に何しにきたんだろ。

あたしの勉強見に来るほど、大樹が頭いいとは思えない。

だって、サッカーで推薦されて高校進学するんだし。

あ、あたしは……ほら、まだ決めてないんだけど。

近くの学校に行けたらいいかな、くらいで。


「……はあ」


なんか、憂鬱になってきた。


勉強、がんばんなきゃなぁー。ってそう思えば思うほど、やる気がなくなるって言うか。

ダメだな、あたし。


「……」


あたしは、またひとつため息をつくと空を仰いだ。


――……キレイ


どこまでも青い空。
その中には、ポツリポツリと真っ白な雲が浮かんでる。

それは全然その場から動かなくて、まるで切りとられた写真みたい。

じっとその雲を眺めていると、ふとちぃちゃんが大事に抱えていた花束を思い出した。



ちぃちゃん達、あんな大きな花束もってどこへ行くんだろう。









――ピンポーン


約束の4時をまわって、あたしはお母さんの作った自慢のフレッシュジュースを抱えてあめ色のドアの前に立っていた。



中から応答はない。



「あれぇ? ちぃちゃんまだ帰ってないのかな」



ジリジリと照りつける太陽は、容赦なくあたしに降り注ぐ。


じっとしてるだけでも、ジワリと汗がにじんだ。




「ユイちゃん!」



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