今すぐぎゅっと、だきしめて。
ここに……いたんだね。
――……ヒロ
ちぃちゃんの部屋。
たくさんの写真が壁やコルクボードに飾られてて。
そのほとんどに、彼がいたんだ。
顔中くしゃくしゃにしてる大樹のお兄さんの隣で呆れたように笑ってる。
大好きなちぃちゃんの隣で、穏やかに微笑んでる。
ちぃちゃんの綺麗な髪に顔を埋めて、愛おしそうに目を細めてる。
たくさんの友達に囲まれて、金色のトロフィーを掲げてる。
ちぃちゃんも、大樹のお兄さんも、ヒロのおばさんもいる。
その隣のメガネかけた人は、ヒロのお父さんなの?
「ほら、真尋……ユイちゃん来てくれたよ」
「……」
真尋(マヒロ)。
……こんな近くにいたのに、全然気づかなかった。
ごめんね、ヒロ……。
うんん、真尋?
「真尋、早く戻ってきて?みんな待ってるのに……何してるのよ」
ちぃちゃんはそう言うと、華奢な指でそっと写真の中のヒロをなぞる。
そんな光景が歪んで見える。
「ユイちゃん、ありがとうね」
「……あ」
いつの間にか、ちぃちゃんの大きな瞳が覗き込んでて。
あたしの頬にその手が触れた。
「ご、ごめんなさいっ。 あたし……」
その事で気づいた。
自分が泣いてたことに。