今すぐぎゅっと、だきしめて。
チラリとあたしを見て、また視線を逸らした彼はスッと何かを指差した。
……?
眉間にシワをよせ、警戒態勢のままあたしは彼の指先を追った。
カレンダー?
「補習って書いてある」
そう言って、あたしに「大丈夫なの?」と聞く。
ほしゅう……
補習?
「うあッ! そうだった!!」
忘れてたけど、テストの補習があったんだッ!
時計に目をやると、すでに8時をまわっていた。
あたしは慌てて飛び起きると、穿いていたショートパンツに手をかけた。
「……」
そこでハッと我に返る。
「てゆーか、誰だっけ?」
足元にくしゃくしゃになって落ちていたシャツを手にすると、あたしは自分の胸を隠して部屋の隅から彼を睨む。
「忘れたの? 永瀬ヒロ。 俺たち昨日……」
「ああぁああっ、思い出した! 思い出したからそれ以上言わないでっ」
一歩あたしに近づいたヒロから、さらに一歩距離をとる。
「……賑やかな奴」
目を丸くしたヒロはそう言って、それからニコリと穏やかな笑みをこぼした。
そうだ……
ユーレイの永瀬ヒロ。
そして、あたしは昨日、ヒロの身体を探すって約束(契約)をさせられたんだ。
夢だと思ってた……とゆーか願ってた。
あたしはそっと自分の唇に触れた。
刺すような痛み……
あれは、キス……?
「ユイ?」
「……」
「時間いいの?」と時計をさすヒロ。
明るくなっても見えるんだ……。
あたしの意識は、ヒロの口元に集中してしまっていて。
きっと頬は真っ赤だろう。
ファーストキス…だったのに。