今すぐぎゅっと、だきしめて。
おかえりなさい


走って

走って




息をするのも忘れて

足がもつれそうになりながら




やっとたどり着いた。




「はぁ……はぁ……」




ここに、いるんだ。



息を吸い込むのを辛い。
だけど、なんとか大きく上下してる自分の胸にギュッと手を置いた。


唇を噛み締めて、顔を上げる。



ヒロ……、今、行くから。



「……よし」



小さく呟くと、「T付属中央病院」と書かれた真っ白な建物に足を踏み入れた。



あたしの何倍もある大きなガラス製の自動ドアが開いて、中から病院独特のにおいが体を包んだ。


この匂いだ。

合宿の時に感じたの。


病院独特の消毒液の匂い。



“外来”と書かれたフロアには、たくさんの人が入り乱れていた。

ガラス張りになっているそのフロアは、とても明るくて看護師さんも、患者さんもみんな笑顔で。

病院なのに、すごく穏やかで優しい雰囲気。




「……えっと、病棟は……」



辺りを見渡すと「ナースステーション」と書かれた場所を見つけ、あたしはそこへ向かった。


< 160 / 334 >

この作品をシェア

pagetop