今すぐぎゅっと、だきしめて。
目に飛び込んできたのは
大きな窓から差し込む
日の光を反射させた真っ白な床。
眩しいくらいの光に思わず目を細めてしまう。
ゆっくりと視線をあげる。
青い空。
流れる雲。
少し開けられた窓。
そこから吹き込む風。
そしてやわらかく揺れる白いカーテン。
5階にあるこの病室からは、空がよく見える。
「……ヒロ?」
そう言った声も震えていて、周りの騒音にかき消されちゃいそうなほどだった。
聞こえるのは
蝉の声。
ドクンドクンってうるさいくらいのあたしの心臓の音と。
もっとゆっくりで、弱々しい……電子音。
『ピッ――ピッ――……』
音のするほうへ足を運ぶ。
小さなベッド。
たくさんの針や線につながれた
――――……彼がいた。
ギュッて、爪の後が付くくらい
手を握ってたのも気づかなかった。
その瞬間はまるで
スローモーションのようで、あたしは瞬きも忘れてた。