今すぐぎゅっと、だきしめて。


いつも見てたヒロとは、やっぱり少し違う。


真っ黒な髪。
硬く閉じられてる瞼は、微動にしない。

酸素マスクをつけてるけど、しっかり息してるし。



あたしは、そっと寝ているヒロに近づいた。



「スー……スー……」



ヒロだ……。


ちゃんと生きてた。


ここにいたじゃん、ヒロ……。



「……キレイ」



……なんてキレイなんだろう。


キュッと閉じられた瞼には、まるで女の子みたいに長いまつげ。

ずっと目を覚まさないのに、ほんのりピンク色した健康的な肌。

マスクの中でほんの少し開けられた薄い唇。
その中から、真っ白な歯がのぞいてる。


ずるいよ、ヒロ……。



「ちぃちゃん待ってるんだよ?」



なに寝てるの?

なんで黙ってるの?

ほら、目を開けてよ……。


いつもみたいに笑ってよ。


どうしたらいいの?


あたし……ヒロの体見つけたよ?


これから何したらいいの?

出てきてよ……





「……ヒロ……」


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