今すぐぎゅっと、だきしめて。
頬をつたって『ポタポタ』ってシーツに涙が落ちた。
それは真っ白な布に、少しだけ痕をつける。
視界が歪んで、ヒロが見えなくて。
あたしはたまらずに目を閉じた。
顔を覆ってしまったあたしを誘うかのように、ふわりと風が吹いた。
そしてあたしを包む甘い香り。
この香り……?
ハッとして目を開けると、見えたのは。
穏やかな風にのって揺れるヒロの真っ黒な髪と。
真っ白な、カスミソウだった。
小さな花をくすぐり、ヒロの髪を撫であたしの濡れた頬を優しく包む。
それはまるで
ヒロがそこにいて「大丈夫」って言ってるみたいだ。
「……ヒロ?」
もしかして、ここにいるの!?
そう思って、顔を上げたその時だった。
ガラッ――
音もしなかったドアが勢いよく開かれ、誰かが病室に飛び込んできた。
驚いて振り返ると、そこにいたのは。
「……あ……」
「……え、どうして?」
なんで?
なんで、ここにいるの?