今すぐぎゅっと、だきしめて。
「わぁ……素敵」
誰の?
きっと女の人のだ。
その指輪にはキラキラきらめくピンク色のダイヤがあしらわれていた。
「なんだ? それ」
「わかんない、忘れ物……かな」
キレイ……。
華奢な指輪にほんの小さなダイヤ。
だけど、その存在は大きくて遠くからでもピンク色がわかるほどだ。
思わず見とれてしまう。
ヒロの……お母さんのかも。
「ユイちゃん? ……と、大樹君」
突然名前を呼ばれ、思わずビクリと飛び跳ねそうになってしまう。
「わッ」
その拍子に、指輪が手の中から滑り落ちる。
――……カラーン
指輪はコロコロと転がって、病室の入り口に立つ誰かの足元で止まった。
あ……そっか。
その人を見て、なんだかすべてわかったような気がした。
――……だって
そうだよ
持ち主、決まってるじゃん。
「さっそくお見舞いに来てくれたんだ。 大樹君が連れてきてくれたんだね」
「え? いや、俺は……」
「そ、そうだよ! 帰りに大樹に会ってね? それで……たまたま……ここに来たんだ」
大樹の言葉を遮って、あたしは笑顔を作る。
なによ、大樹。 そんな顔で見ないで。
別に驚くとこじゃないじゃん。
だって、その指輪の意味もあたしに語りかけて来たあの『声』もわかっちゃったんだもん。
「真尋、こんなに早くユイちゃんに会えたね? もっと見たいでしょ?ユイちゃん、すっごくかわいいんだよ」
「や、やめてよちぃちゃん」
そんな事言わないで?
あたし、変だ。
なんで
何、泣きそうになってんのよ。