今すぐぎゅっと、だきしめて。


制服に着替え外へ出ると、太陽の陽射しがジリジリと肌を焼く。

朝だというのに、すでにアスファルトからは照り返しの熱が体を包んだ。



「……あつ」



空を見上げると、青々と茂った木々の間から真っ白な入道雲が見える。

頭の上から降り注ぐような蝉達の鳴き声。

時々足元から吹き上げる風は、やっぱり生暖かで。



やっと肩より伸びた癖のある髪を揺らした。





「おはよ、ユイちゃん」



突然、声がしてあたしは慌てて振り返った。


「あ…ちぃちゃん、おはよッ」


お隣の2つ年上のちぃちゃん。
真っ黒で長い黒髪。
まるで、TVで見かける芸能人のように綺麗なお姉さん。

一人っ子のちぃちゃんは小さな頃から、あたしの事をほんとの妹のように可愛がってくれてた。


高校に入って、あまり遊ばなくなったんだけど
それでもこうして時々会うと、昔と変わらない笑顔であたしに話しかけてくれるんだ。


そういえば、この前お母さんが言ってたっけ。

ちぃちゃんには、付き合ってる男の子がいるって。
たまたま見かけたらしくて、興奮して帰って来たんだ。

『お隣のちぃちゃんの彼氏が出きたわよッ』って。

しかも。


その彼氏は、ちぃちゃんにお似合いのかっこよくて優しそうな好青年。


やっぱり、あたしの憧れはちぃちゃんだ。


そう思ったのを思い出す。







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