今すぐぎゅっと、だきしめて。
「…………」
大きな瞳をさらに見開いたちぃちゃんの腕から、次々と缶ジュース達が零れていく。
――ガラガラ!
静かな病室に、まるで雷みたいに響くその音に、体がビクリとはねた。
「ど、どうしたの?」
あたしの声なんか聞こえてないみたいに、目を見開いたまま、一点を見つめてる。
ちぃちゃんの腕の中から零れ落ちた缶が、コロコロとあたしの足元に届く。
サイダーに、オレンジジュース、紅茶にいちご・オレ。
4つ?
1本多い……って、そか。
ヒロのぶんか。
目を覚まさないヒロのぶんも買ってくるなんて、ちぃちゃんの想いがそれだけで伝わってくるみたい。
足元に散らばった缶ジュースを拾おうと体をかがめたその時、背後で人の動く気配がしてあたしはハッと顔を上げた。
――ドクン!
あたしが振り返ったのとほぼ同時。
真っ黒な髪が視界を横切る。
それは、ハラハラあたしの視界からフェードアウトして、まるで風のような残像。
カスミソウの香りと一緒に、ちぃちゃんは駆け出していた。
スローモーションのようだった。
駆け出したちぃちゃんの後ろから、大樹が現れて。
その大樹の顔も、ポカンと口を開けたままあたしを通りこしてちぃちゃんの後を追う。
そして聞いたんだ。
ちぃちゃんの叫びを―――……
「…………真尋ッ!」
ヒロが、目を覚ました。