今すぐぎゅっと、だきしめて。

真っ白なベッドの上で、天井を見つめる瞳。
何度か瞬きを繰り返して、そっとその瞳をずらした。


「真尋ッ……真尋? よかった……本当によかった……ッうぅ」


ギュッとヒロの胸に顔を埋めるちぃちゃん。
ヒロの瞳が、傍らで涙を流すちぃちゃんの姿をとらえた。

虚ろな瞳。
それでもヒロは、ゆっくりとベッドから腕を出して、その手でちぃちゃんに触れた。


「……千紗?」

「心配したんだからッ! ……っく……おかえり、真尋」



ヒロの華奢で長い指がちぃちゃんの髪をすき、その手は涙で濡れた頬へ伸びる。



「……ごめん。 ただいま」



そう言って、ヒロは優しく優しくちぃちゃんに囁いた。

あれ?
ヒロの声、そんなだった?
いつもと……なんか違う。

なんてゆーかもう少し高かったでしょ?
そんなに低かった?
そんなにハスキーだった?
鼻にかかってなかったじゃん。


……変なの。


ドクンッ……ドクンッ








まるで映画だ。

そして、あたしはそれを眺める観客。


あたしと、ヒロの距離に見えない壁を感じた。


思い出したんだ……、事故に遭う前の記憶。


「そうだッ、先生呼んでくる。 それからお母さんにも連絡してくるから」


ちぃちゃんはそう言うと、くるりと向きを変えてあたしと向き合った。



……なに?



「わたし、ちょっとだけ行ってくるから、真尋が目を閉じないように見張っててほしいの」

「え?」

「だって……もしかして、目を閉じちゃったらまた目を覚まさない気がするの。 それから大樹君、お兄さんに連絡とってくれない?」

「お、俺が?」


「お願い!」とちぃちゃんは顔の前でパチンと手を合わせると、大樹の手を掴むと慌ててドアを開けて出て行った。


あれ?

デジャブ?



「…………」


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