今すぐぎゅっと、だきしめて。



「ありがとう、ユイちゃん」

「え?」



不意に隣りに並んだちぃちゃんが、あたしにこっそりと耳打ちした。
きょとんと見上げると、まだ目のふちに涙をうっすらためたちぃちゃんがそこにいた。



「ユイちゃんが、真尋の事……呼び戻してくれたんでしょ?」

「そっそんな……あたしは、何もしてない」




ドクドクした。

なんでちぃちゃんがそんな事言うの?



「でも、ユイちゃんが真尋に会いに来てくれた日に目を覚ますなんて。
もう、偶然とは思えないの。

だから、言わせて?

真尋に会いに来てくれて……ありがとう」



そう言ったちぃちゃんは、そっと涙を拭った。




ちぃちゃん……

あたしは、本当に何もしてないんだよ。

ヒロがこうして戻ってきたのは、ちぃちゃんの「想い」がヒロに届いたんだよ。



だから……。

あたしにお礼なんて、言わないで。



「…………」



ヒロは、そんなあたしにチラリと視線を合わせた。


窓から注ぐ
太陽の光に反射して、少しだけ茶色がかってるヒロの瞳。



――ドクンッ



その中に吸い込まれてしまいそうだ。


真剣なその顔に、一気に全身の体温が上昇する。



ダメ……それ以上見ないで。




ドクン

ドクン



ヒロの視線に気づいたちぃちゃんが、あたしを覗き込んだ。


それでも、ヒロの呪縛は解けなくて。
真っ黒な前髪の隙間から覗く、その力強い視線は、「生きている」からこそ。


もう、あたしのすべてを見抜かれちゃったみたいで、泣きそうになった。


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