今すぐぎゅっと、だきしめて。
まるで、尋問だ。
その時、甘酸っぱい香りが鼻先をくすぐった。
つられるように顔をあげると、かわいいアンティークのカップが目に入った。
「お待たせいたしました。 ストロベリーティです」
そう言って、華奢で綺麗な手が、流れるようにテーブルにカップを置く。
「……それと」
店員さんは小さくそう言うと、ブルーとイエローのグラデーションのついたガラス製のお皿を置いた。
その上には、まるで宝石みたいな色んな形のチョコレートが並んでる。
「オーナーからです」
「あ、あの……ありがとうございますっ」
慌てて顔をあげると、店員さんはにっこりと愛想のいい笑顔を浮かべた。
「チョコは人を幸せな気分にしてくれます。―…是非」
彼はそう言うと、ペコリと頭を下げて目を細めた。
少しだけ日に焼けた綺麗な肌に、よく似合う真っ黒な髪がふわりと揺れた。
薄い唇をキュッと持ち上げた彼は悪戯な笑みを向けて「裕貴さんも、どうぞ」と言ってさっさと行ってしまった。
え?
この人とも知り合いなの?