今すぐぎゅっと、だきしめて。
ちぃちゃんは、吐き出すようにあたしの名前を呼んだ。
一歩ずつ近づいてくるちぃちゃんの顔は、今にも泣き出しそうだ。
昼間の光景が、脳裏をよぎる。
ヒロと一緒にいた時のちぃちゃんとは、まるでちがくてびっくりした。
「ちぃちゃん……どうしたの?」
なにかあったんだ……。
ちぃちゃんは、あたしの言葉を聞くなり白くて華奢な両手を伸ばして、あたしを抱きしめた。
「……ち、ちぃちゃん?」
「どうしよう……どうしよう」
カタカタと震える体。
小さな声で。
今にも消え入りそうな声でそう言って。
ちぃちゃんは、力の限りまわした腕に力を込めた。
「……ま、真尋さんと……なにかあったの?」
聞いていいのかわからない。
でも、あたしより少しだけ背の高いちぃちゃんの鼓動が。
すごく速くて、ドキドキしてたから。
きっと、いやな事があったわけじゃないって、なんとなくわかった。
ヒロの名前を出すと、ちぃちゃんの体はビクリと震えた。
でも、ちぃちゃんはフルフルと首を振った。
ヒロじゃ……ない?
今、ちぃちゃんからヒロの話を聞いたら……
あたしの中にある真っ黒な感情が、出てきちゃいそうだった。
恐かった。
大好きな、ちぃちゃんを……。
大好きって笑っていられなくなりそうで。
だけど……。
ヒロじゃないなら……誰?