今すぐぎゅっと、だきしめて。

「ユイ、先に顔洗ってきなさい。 って、なにあんた……酷い顔」

「……」


お母さんてば、容赦なくあたしにそんな言葉を投げつける。

目を丸くしてもっとよく見ようと覗き込んでくる。
あたしは、それを避けるようにさっさと洗面所へ向かう。


……なによ、お母さんってば。
わかってるもん。

あたしなんて丸顔だし、童顔だし?
ちぃちゃんみたく綺麗じゃないし!

それにっ
あたしにだってちょっとくらい
いいところあるでしょ?


ほら、ひとつやふたつ!


大きな鏡の前に再び現れた、あたし。


バンッと両手をついて、あたしは鏡の中のあたしとにらみ合う。


いいとこ……。
いいとこ……。


ひと夏でちょっとだけ伸びた髪。

癖っ毛の猫っ毛。
それは寝癖のせいでよけい跳ねてて。

……どうしよもない。

白い肌は……自慢にはならない。

大きな目も……ちぃちゃんには劣る。

小さな鼻は……論外。



だからって……
だからってぇー!!!



「はぁ……」


やめよ。

なんか自分で言ってて凹んできた。


考えたら考えただけ、あたしはちぃちゃんには敵わないって事が証明されてくんだもん。



ジャブジャブって顔を洗って、タオルで拭きながらまた溢れそうな涙を押し込めた。






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