今すぐぎゅっと、だきしめて。
学校の門をくぐるとすぐに、背中を誰かに思い切りはたかれた。
「おっはよーっ、ユイ」
「ひゃっ!」
びっくりして、持っていた鞄を思わず落としそうになる。
「んもぉ! ユイはほんとにビビリなんだから。 いい加減なれてよね?」
ケラケラ笑ながら、あたしの顔を覗き込んだ親友をキッと睨む。
「てゆーか、奈々子っ。
だったらやめてくれないかなっ?その挨拶っ」
プイッて顔を背けたあたしを見て、奈々子はふわりと目を細めた。
「……ユイ、いつものユイだね。 よかった……安心した」
「え?」
ポツリと呟く奈々子の声に顔を上げる。
綺麗な黒髪と一緒に、奈々子があたしに頭を下げた。
……えぇ?
「ちょ……、奈々子どうしたの?」
サラリと肩から落ちる髪が、太陽の光を浴びてキラキラと輝く。
あたしは慌てて奈々子の肩を掴んだ。
「ごめん、ユイ。 昨日あんな事して」
「……」
昨日……。
あのカフェのこと?