今すぐぎゅっと、だきしめて。


学校の門をくぐるとすぐに、背中を誰かに思い切りはたかれた。



「おっはよーっ、ユイ」

「ひゃっ!」



びっくりして、持っていた鞄を思わず落としそうになる。



「んもぉ! ユイはほんとにビビリなんだから。 いい加減なれてよね?」



ケラケラ笑ながら、あたしの顔を覗き込んだ親友をキッと睨む。



「てゆーか、奈々子っ。
だったらやめてくれないかなっ?その挨拶っ」





プイッて顔を背けたあたしを見て、奈々子はふわりと目を細めた。



「……ユイ、いつものユイだね。 よかった……安心した」


「え?」



ポツリと呟く奈々子の声に顔を上げる。



綺麗な黒髪と一緒に、奈々子があたしに頭を下げた。



……えぇ?



「ちょ……、奈々子どうしたの?」



サラリと肩から落ちる髪が、太陽の光を浴びてキラキラと輝く。


あたしは慌てて奈々子の肩を掴んだ。




「ごめん、ユイ。 昨日あんな事して」

「……」





昨日……。



あのカフェのこと?



< 201 / 334 >

この作品をシェア

pagetop