今すぐぎゅっと、だきしめて。
「な、なに言ってんの。
あたし怒ってなんかないよ」
「でも、あたし……裕にぃがユイに何を言いたかったのか知ってたんだよ?」
「え?」
キョトンとするあたしを見て、奈々子はキュッと唇を噛んだ。
「知ってたの。 永瀬ヒロ……真尋について聞きたがってた。 あたし、裕にぃが千紗さんの事好きなの知ってたんだ。
だから……ユイの力になりたかった。 ユイの想いが少しでも永瀬真尋に届けばいいって……だからあんなマネした……。
マジ、ごめん!
ユイにとっては、迷惑だったでしょ?ほんっとにごめんっ」
「奈々子……」
そうだったんだ……。
あたしがヒロを好きなの知ってる奈々子。
その気持ち、すごく嬉しい。
「許さない」
「え」
驚いて顔を上げた奈々子。
あたしはその奈々子に飛びついた。
「謝るなんて許さないからっ!」
「……ユイ」
泣きそうだった。
ヒロへの想いとか。
ちぃちゃんの想いとか。
みんなの想いとか。
どうして
うまくいかないんだろう?
どうして
大切な人は1人なんだろう?
ぜんぶひっくるめて、涙を流すことでリセットできたらいいのに。
そして。
またイチから。
そう想うのに。
そうできたらって。
だけど……。
気づいちゃった。
それでもあたしは……
――――……ヒロが好きなんだって。