今すぐぎゅっと、だきしめて。
ヒロのその笑顔から思わず顔をそらすと、ちぃちゃんが心配そうにあたしを覗き込んだ。
「ユイちゃん? どうしたの?」
「……えッ」
慌てて顔を上げると、逆光になったちぃちゃんが首をかしげた。
「……あ、もしかしてこれから予定あった?」
かなしそうに目を細めたちぃちゃん。
わわっ
ちぃちゃんに怪しまれちゃうッ!
「うんん! 全然平気っ。 なぁんにもないよ?」
そう思った瞬間、あたしは大袈裟に顔の前で手を振っていた。
「……っ……」
うはぁ……。
なんかもっと怪しくない?
自滅……。
音を立てて顔が熱くなる。
そんなあたしを見て、キョトンと大きな目でパチパチと瞬きしたちぃちゃん。
「あはは!……よかった。 じゃ、今から少しうちにあがっていってね? お母さんが美味しいケーキ焼いたのよ。 たくさんあるからあたし達で食べきれるか心配だったのよね。 助っ人、よろしくね?」
「……は、はぁ」
ぎゃー!
さ、最低!
簡単にOKしちゃったけど……ど、どうしよう……。
ヒロと、ちぃちゃん……。
あたし、大丈夫かな?
ちぃちゃんの家の前で、ヒロはあたし達のやり取りを眺めてたみたいで、あたしと目が合うとなぜかすぐに逸らしてしまった。
うぅ……気まずい。