今すぐぎゅっと、だきしめて。
「じゃあ、ユイちゃんと真尋はそこのソファに座ってて」
「……え」
リビングに入ったところで、ちぃちゃんが言った。
えええええッ!?
む、無理!無理無理っ!
絶対無理ーー!
「ち、ちぃちゃんだけに、悪いよ! あた、あたしも一緒に……」
そんな事はさせまいと、慌ててかばんを置くと、ちぃちゃんに詰め寄る。
……だけど。
「だぇめ。 ユイちゃんだってお客さんなのに。 いいから座って待ってて」
「……ちぃちゃ……」
「そんなに気をつかわなくてもいいの。 わたしひとりで大丈夫」
助けを求めるあたしの願いも虚しく。
ちぃちゃんは、にっこり微笑むとキッチンに消えて行った。
気をつかう、と言うか。
ただ……
ただ、どうしていいのかわかんなくなるから。
「……」
シンと静まり返ったリビング。
背中にいるヒロが、あたしを見つめてる気がして。
どうしても振り返ることができない。
息の仕方を忘れてしまいそうなほど、あたしは自分の背中越しにヒロを感じていた。
恐いよ……。
こんなの耐えれるわけがない。
今までどうしてたんだっけ?
ドクドクうるさい心臓が、これでもかってほど全身に血液を送る。
目眩がしそうだ。
耐え切れず、目をギュッとつむった、その時。
「とりあえず、座ったら?」