今すぐぎゅっと、だきしめて。

補習のある教室は、なぜか校舎の一番奥。

そこに行くためには、二つの校舎を結ぶ渡り廊下を通らなくちゃいけない。



…遠い。


なんでわざわざそんな遠い教室でやるんだ!


って、理由は決まってる。


それは、担当の先生の教室だから。


…ッたく。



ブツブツ文句を言いながら歩いていると、やっと渡り廊下にさしかかった。



三階にあるこの廊下。



ここは、好き。



だって、空に浮かんでるみたいなんだもん。



少しだけ見上げれば。


どこもまでも続く蒼い空。
そして、穏やかに流れる真っ白な夏の雲。


あたしの髪や
制服のスカートを揺らす悪戯好きな風。



なにもかも。


あたしの『好き』が溢れてる。



それに、あたし達の住んでる町も見渡せるし。


世界はあたしが中心!!

そう叫びたくなる。



「きもちー……」



ガラス戸を開けて、一歩踏み出すと待っていたかのように
風達があたしと、そして奈々子を包む。



「もー、風強すぎだし! スカート捲れるっつーの」

「……」



……奈々子。

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