今すぐぎゅっと、だきしめて。

ドクン

ドクン



そ、それって……どういう……。





「……ちぃちゃ……」





そう口にして、口の中が乾いてることに今頃気付いた。
カラカラの砂漠状態で、あたしはちぃちゃんの名前を出してそのまま言葉を呑み込んでしまった。

何度も瞬きを繰り返して、ハッとうつむいた。





もしかして、し……知ってる?



あたしと……ヒロの秘密……。



2人の。

2人だけの秘密を……。




グルグルと、頭の中を駆け巡る感情。
なにも返す言葉が見つからず、あたしはただ視線を泳がせた。






――――――。








「あはッ。 困らせちゃった」


「へ?」



その声に顔を上げる。



「変なこと言ってごめんね? ただの偶然かもしれないのに。 真尋、空を見上げることが好きなんだ」



さっきまでの真剣な眼差しが嘘だったみたいに、ちぃちゃんはいつもの笑顔でいたずらに言った。



「空だけじゃなくて、海とか雲とか、星とか。 一番好きなのは月を眺めること……なのかな」


「……」




知ってる。


ユーレイの時、よくあたしの部屋の窓辺に座って月夜を眺めてたもん。

気付いたよ?




「でも、それも言い訳だね」


「え?」


 
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