今すぐぎゅっと、だきしめて。
「真尋やユイちゃんのことを言い訳にするなんて、わたしってずるいね」
ちぃちゃんは濡れたままだった手を布巾で拭って、ハラリと肩に落ちた髪を耳にかけた。
そのしぐさは、女のあたしでもドキリと胸を焦がす。
それくらい、ちぃちゃんて綺麗で、魅力的で。
ずるくなんかないよ。
「…………真尋が目を覚ましたから、安心したのかな…………」
そう言ったちぃちゃんはなぜか今にも泣き出しそうで。
その心の中は、あたしにはわからなかった。
「……」
リビングに戻ると、ソファの背に体を預けたヒロがオレンジから赤に染まる空に目を向けていた。
その姿が、いつか見た月光の中のヒロと重なって見えて。
なんだか無性に泣きたくなったんだ。
あたしの存在に気付いたヒロは、ゆっくりと視線をこちらに向けた。
ほんの少し目を見開いて、それからふわりと笑みをこぼしたヒロ。
どこか、それを懐かしいと感じてしまう。
それは、きっとちぃちゃんに似てるんだ。
その大好きな笑顔が、似てる。
お似合いの2人だよ。
……ズキン
改めて、確信してしまった。