今すぐぎゅっと、だきしめて。
うんざり顔のあたしなんかお構いなしで、奈々子は大きくて少し吊り上った瞳をキラキラさせた。
「告白されたんでしょ? 付き合うの?もう付き合っちゃえばいいじゃんッ!大樹かっこいいし、結構人気あんだよ?」
「えぇ~……」
グイグイと腕が引っ張られ、制服がどんどん伸びていく。
たくさんの部員の中から大樹の姿を見つけた。
短くカットされた少し茶色がかった髪。
硬いから、少しでもやわらかく見えるように茶髪にしてるんだって。
その根拠が、あたしには理解できないけど……。
真っ黒く日に焼けた健康的な肌。
ホイッスルが鳴ると両手を膝について肩で息をしてる。
そりゃ、暑いよね?
大きく息を吸い込むと大樹はシャツの襟をグイッと持ち上げ首の汗を拭いた。
「……」
確かにその姿は「かっこいい」のかもしれない。
でも。
あたしはそんな「恋愛」の対象には見れないんだ。
大樹も奈々子と一緒で小学校からの腐れ縁。
家も近いし、昔はよく遊んだりしてた。
でも、それも「昔」の事。