今すぐぎゅっと、だきしめて。
冗談なのかなんなのか。
でも、和田君もちゃんと『目標』があって。
それを叶えるために自分の道を決めてるんだ……。
和田君の隣に並んで、あたしもそっとフェンスに手をかけた。
視線を落とすと、部活の生徒もチラホラで、みんな帰路についているらしかった。
その中に、大樹の姿を見つけた。
「……」
まだ、部活出てるんだ……。
3年生は、夏が過ぎたら自主参加になる。
高校、サッカーの推薦で行くんだもんね。
そっと空を仰ぐ。
オレンジからビロードに染まり行く空。
その中に1番星を見つけた。
「あたしには……なにがあるかな」
ポツリと呟いた言葉を、秋の風が空へと運んでいく。
「自分に正直にいることが、いけない事だとは、思わないけど」
あたしと同じように、独り言みたいに呟いた和田君。
彼の言葉が、なぜかスーッと胸に染み渡る。
あたしは……。
どうなのかな?
ちゃんと、前に進めてる……?