今すぐぎゅっと、だきしめて。
「…………」
シンと静まり返る、教室……。
そこに場違いなほど、明るい声が響き渡る。
「コスプレ写真館? マニアックだなー、なんだよお、客が1人もいないじゃん」
一気に視線を集め、あたしと奈々子は顔を見合わせた。
みんなの視線を浴びても、なんの迷いもなく教室に足を踏み入れたのは、もちろん大樹のお兄さん。
「なら、俺が最初の客になってあげるよ。 なにがあるの?」
ニコニコと愛想のよい笑顔をふりまいて、裕貴さんは受付の机にむかった。
「え……あの……」
イスに座っていたクラスメイトの真理(マリ)の頬がどんどん赤くなる。
それもそうか。
だって、裕貴さんってば真理との距離が近い。
首を傾げて、「ここに名前書くの?」って言う姿は、人懐っこいと言うか何と言うか……。
裕貴さんは、俗に言う“かっこいい人”だ。
背も高いし、切れ長で少し吊り上った目。
スッと通った鼻筋と、それに見合った薄い唇。
うん、かっこいい。
大樹と同じ顔。
だけど、裕貴さんは大樹の爽やかな感じに色気をプラスしたって感じだ。
そして……。
あたしはかがんで用紙に名前を書いている裕貴さんから、チラリと視線を上げた。
「……」