今すぐぎゅっと、だきしめて。
「なんで俺まで……」
大きな溜息が頭上から届く。
見上げると。
「でも、ものすごーく似合ってるよ? 真尋」
「え、そう?」
ちぃちゃんにそう言われて、ヒロは自分の服をつかんでジトーっと目を細めた。
それって、その浅葱(あさぎ)色って……。
あたしでもわかる。
新選組の「沖田総司」のもの?
目にかかりそうな黒い前髪。
伏し目がちの瞳は、長いまつ毛が動くたびに揺れる。
ううッ!
似合いすぎる……。
それは反則です!
あたしの意思とはウラハラに、勝手に火照る頬。
それを誤魔化したくて、ガバッと裕貴さんを見た。
…………。
キラキラの宝石があしらった服を着た裕貴さん。
その姿はまるで本物の王子様だ。
クラスメイトだけじゃない、その姿に教室の前を通りかかった女生徒達が立ち止まる。
うわー……。
裕貴さんすごすぎ。
なんて感心してると。
「すっごく似合ってます! ね、ユイ?」
「え、え?」
突然背後から奈々子があたしを覗き込んできて
慌てて顔を上げた。