今すぐぎゅっと、だきしめて。




「ふーん……さっきのがユイの好きな奴か」



いきなり声がしたと思ったら、視界が塞がれる。



「……きゃあああああぁぁああッ!!!」



ガタガタッ!



あんまりビックリしたもんだから、あたしはイスから転げ落ちてしまった。



「……あ、あ…あ…」



目の前には、宙に浮かぶヒロ。

転げおちたあたしを心配するように、困った顔をしてる。



「ご、ごめん」そう言って、手を差し伸べたけど。
何かに気づき、またその手を引っ込めてしまった。



……なによ、起こせ。



「安達ー? 居眠りすんなー」

「……えっ? あ……はい」


折れたチョークを小刻みに震わせて、引きつった顔の神田。



居眠りじゃないしッ!


あたしは、慌てて倒れたイスを起こすとそそくさと座りなおした。

ってゆーか、ヒロ!
一体どこにいたのよ?

どうなってんのよ、ユーレイのからくり!


さっきまでちっとも姿現さなかったから、すっかり忘れてたのに。



「……」



もー最悪じゃんッ!


みんなの注目の的だし。 





奈々子のあの顔ッ! 絶対あとでからかわれるよぉ~





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