今すぐぎゅっと、だきしめて。
「サッカー部のほうで、けっこうつかまっててさ。 なかなか帰って来れなくて、マジ焦ってたんだからなー。 お前ら薄情だな。 探しに来いって」
「で、逃げてたの?」
頭に付いた葉っぱをひとつ、背伸びをした奈々子がとってあげた。
なぜかその動作が、あたしの胸に響いて。
こっちが恥ずかしくなってしまった。
だって、まるで映画のワンシーンみたいで
スローモーションのように感じてしまったから
「……大変だったんだぞ。 こっちに戻ってくるの」
「あ、そ」
目を逸らした大樹。
素っ気なく言った奈々子は、手にしていた葉っぱを窓から風に飛ばした。
……。
大樹……アンタ……もしかして……
そんな様子を眺めていたあたしに気づいて、大樹が顔を上げた。
「……大樹?」
「……」
思わず、名前を呼んだあたしを見て頬を真っ赤に染めた大樹は気まずそうにパッと視線をはずしてしまった。
それで確信した。
そうか。
そうなんだ……。
嬉しくて、思わず頬が緩んだ。
その時だった。
色んな音を掻き分けて、あたしの耳に届いた声。
「ユイちゃん」