今すぐぎゅっと、だきしめて。
ドクン
え?
「……わ……か、れた?」
「うん。 真尋が目を覚ましてすぐに。 フラれちゃった」
うそ……。
だって、ちぃちゃんの家に来てたじゃん。
ヒロ、笑ってたじゃん。
……別れた?
なんで……なんで?
「大事な、幼なじみに戻っただけよ」
そう言って、ちぃちゃんは穏やかに笑った。
それから。
あたしはどうやって帰ってきたか覚えていない。
頭の中が真っ白って、このことかな。
なにも考えられなくて。
手に付かなくて。
せっかく中学最後の学祭が、終わってしまった。
学祭が終われば、もう待っているのは受験だけだ。
あっという間に秋は過ぎ、冬本番を迎えようとしていた。
あの学祭以来、ちぃちゃんに会う事も少なくなった。
時々、本当にたまーに玄関先で会うくらいで、家に遊びに。なんて事はもうしていない。
それに、ちぃちゃんが別れたって言ってた。
その言葉通り、ちぃちゃんといるヒロを見ていないんだ。
本当に、別れちゃったのかな……。
2階の窓からは、ポプラの葉の間からお隣の玄関が良く見える。
あたしは机に向かいながら、ふと顔をあげてぼんやりしてしまう事が多くなった。