今すぐぎゅっと、だきしめて。
「何してんだよ。 ほら、早くドア開けてよ」
「は?」
水谷は、さらにその目を細めるとクイッと顎を動かして見せた。
む!
な、なんか腹立つヤツだなー。
あたしはキッと水谷を睨んで、ドアを両手で押し開けた。
その瞬間、耳をつんざくような音に、思わず肩をすくませた。
「あ!ユイーっ、遅い~」
「やっと来た。 ほらこっち!」
見ると、並んだソファの奥に奈々子と香澄ちゃんの姿が目に入った。
そそくさと奈々子たちのところに行くと、マフラーを解きながらストンと隣に腰を落とす。
「はあ~寒かった」
両手を擦り合わせてフーッと息を吹きかけたあたしを見て、奈々子が顔を寄せた。
「カラオケ、結構人集まったね!」
「え?」
「水谷が集めたんだよ。 クリスマス、1人で過ごすなんて寂しすぎるーって。 あ、ユイはなに頼む?」
香澄ちゃんが大きなグラスのオレンジジュースを口に運びながら言った。
そうなんだ。
定番だけど、あたしたちは独り身だけ集まって、クリスマスパーティをやろうって事になった。
で、会場がこのカラオケ。
見ると、向かいの席に水谷を含めた結構目立つタイプの男子たちが楽しそうに笑いあってる。
すみっこに、大人しそうなグループの子達もいて、本当に分け隔てなく参加してる感じだった。
あたしと奈々子は、香澄ちゃんに誘われたんだけど。
そっか、水谷……いいとこあるじゃん。
「えーっと……」
飲み物を頼もうと立ち上がった、ちょうどその時だった。
「わりー、遅くなった!」
勢い良くドアが開いて、大樹が飛び込んで来た。