今すぐぎゅっと、だきしめて。

やっと2時間の補習を終えたあたし達は、アイスでも食べに行こうって事になった。


なんだか、さっきよりもずっと近くになった太陽。
あたしは手で陽射しを遮りながら校門でソワソワと顔を出す、不審な人影に気づいた。



「ありゃりゃ? ユイ、アイスは今度って事になりそうだね?」



ひッ!
あ、あれは……




そこから顔を出す人物。
そいつは、あたし達に気づいて、嬉しそうに。
でも少し恥ずかしそうに手を上げた。


「ユイッ! 一緒に帰んねぇ?」

「……あ、大樹」



そう呟いて、咄嗟に奈々子の顔を見る。

それはそれは嬉しそうに
目を細めている奈々子に、思わず体にビリっと電気が走った。


大樹は、そんなあたしの気持ちに気づかないのか、日に焼けた頬をさらに赤く染め、あたし達に歩み寄った。



「補習どうだった? って、なんだよ奈々子もなのか?」

「…大樹、いくらなんでもあたしの存在忘れすぎ。 ええ、そうよ。あたしもいたわよ。 どーせあたしはユイの付属品ですよッ」

「ばッ! バッカじゃねぇの? なんでそこでユイが出てくんだよ」

「あのね、あんたわかりやすいのよ」



……。



この二人、昔からこう。


顔を合わせてはいつも口げんか。


そして、その原因は大抵、あたし。



「ちょ…ちょっと、二人とも! こんな暑い日にさらに暑くなるような事やめてよ」



そして、あたしはこうして二人の間にはいってなだめるんだ。



「どうどう」とまるで動物をなだめるように両手で制止する。


はあ~……


てゆーか、奈々子……
そのケンカしてる姿。

どう見ても嫉妬して怒ってる彼女だよ……。




『…てことは、好きな奴ってわけでもないんだ』


「…!!?」


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