今すぐぎゅっと、だきしめて。
モコモコのダウンを着た大樹は、迷わずあたしの横に腰を落とす。
「大樹、たしか今日ってサッカー部のクリスマス会があったんじゃなかったっけ?」
「さみぃ」って言いながらマフラーを外す大樹に向かって声をかけた。
「んー。 顔だけ出してきた。 あっちもここでやってんだよ」
「え、そうなの?」
「俺も大変なんだよ」ってうんざりしながら言って、大樹は電話をとって耳に押し当てた。
「注文いいっすか? えーっと、コーラと、あとは……ユイは?ココア?」
「へ? あ、うん」
いきなり話をふられて驚いたけど。
もっと驚いたのは、大樹があたしが飲みたいものをわかったこと。
さすが、幼馴染だ。
なんて、感心してしまった。
それからあたしたちは、カラオケで2時間騒いで過ごした。
プレゼント交換して、みんなで楽しんだ。
だけど……ずっと気になってる事があったりして……。
それは、気のせいだと思ってたんだけど。
「おい」
「え?」
もう解散って時間になって、トイレに行ったあたしを待ち構えていたのは。
水谷だった。
「今から少し時間ある?」
「え?……あたし?」
あったかそうなパーカーに両手を突っ込んだ水谷は、壁に寄りかかったままそう言って、あたしの顔を覗きこんだ。
茶色く染められた髪が、サラリと揺れて二重の大きな瞳があたしの答えを待っている。
え、え?
水谷が……なんで……。