今すぐぎゅっと、だきしめて。

さっきからちょくちょく目が合うなって思ってた。
気が付いたら、こっちを見てた。みたいな。


それでいて、すぐにそらされてしまってて、正直失礼なヤツだっておもってたんだけど……。



その水谷があたしに、なんの用だろう……。




「お前以外に誰がいんだよ。 アホだな」


「は?」




はあって大きな溜息と共にそう言った水谷。

なにその言い方!




「あのねぇそれが、人を誘う時に言うセリフ?」

「……」



ツーンとして、水谷の前を通り過ぎようとした瞬間。
いきなりガシッと腕を掴まれた。



「……な、なに?」



驚いて顔を上げると、栗色の前髪しか見えなくて。
思わず覗き込むと、チラリとあたしを見上げる水谷の視線と絡まった。



ドキン



真剣なその眼差しに、不覚にも胸が反応してしまう。






え?



いつもの水谷じゃないよ……。

怖くて、変に緊張してしまって。



ヒロの手でも
大樹の手でもない。


全然知らない、男の子のぬくもりだ。


目眩がして、耐え切れずに口を開きかけたその時だった。

俯いていた水谷が、先にその重たい口を開いた。






「好きだ」


「……」





え?


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