今すぐぎゅっと、だきしめて。



突然、頭の中に声が響いて、あたしの体にまた電気。


慌てて顔を上げると、あたしの真横。


そこには永瀬ヒロがいて
「そうか~」と一人納得したように腕組みをしていた。


だから!


さっきまでいなかったじゃん!
その仕組み、教えてくれないかな?
いちいち、ビックリするから!!!


「ユイってモテるんだなぁ、童顔が受けるのかな?」

「……」


なにやら勘に障る事をぼやいてるけど、それは今のあたしには気にならなかった。


だって……。

こうして隣りにいるのを見ると、まるで生きてるようだ。


昨日はぼんやりと濁って見えた輪郭も。
日の光に当たって、しっかりと見て取れる。

 

真っ黒な髪

くっきりとした二重

決して高くはないけど、スッと通った鼻

薄い唇

白いTシャツから覗く艶かしい鎖骨

無駄な贅肉のない筋肉質な腕。

長い足を隠しているグレーのジーンズ。




生身の人間みたいだ。







ほんとに……ユーレイ?






(…あ、あのね! さっきもそうだけど、突然話しかけるのやめてくれない? ビックリするんだからねッ。 それに、頭の中に話しかけられるの…まだ、慣れない)


目の前で、まだ口ケンカをしている二人に気づかれないようにこっそりとヒロに話しかけた。


『……』


ヒロは、チラリとあたしを見ると、また視線を戻した。




な…なによッ!

あたしには勝手に話しかけてくるのに、あたしの事は無視なのッ?




むむむ……

なんか、むかつくぅ…





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