今すぐぎゅっと、だきしめて。
学校が始まって、みんな受験モードに入っていた。
「うわぁーん。 もうダメだあああッ」
放課後の図書室で、ベターっと机に突っ伏したのは。
もちろん、あたし。
「あきらめんな!」
「まだあと1週間もあるんだし、なんとかなるって!」
「……ほんと?」
心優しい親友達が、あたしの肩をバシンと叩く。
涙目で見上げると、奈々子と大樹が顔を見合わせたとこだった。
……。
あの?
(本当って言ってやれよ!)
(大樹が言いなよッ)
目配せしてても、2人がなにを言いたいのかわかるんですが……。
何年一緒にいると思ってるのよ。
「はあ……」
あたしは体を起こすと、参考書に視線を落とした。
頑張るしかない。
自分でやるって決めたんだもん。
それから奈々子は用事があるって言って先に帰ってしまって。
いつしか人もまばらになった図書室に、あたしは大樹と向き合って座っていた。
静かな図書室には、他にも勉強してる人が数人いて。
シャーペンの滑る音がにわかに聞こえていた。
一息ついて、顔を上げると、スポーツ雑誌をひざの上に広げてぼんやりと窓の外を眺める大樹がいた。
イスに身をなげだして。
あたしの視線なんてまるで気づくようすはない。
……。
あたしは小さく息を吸い込むと、大樹の顔を見つめながら口を開いた。
「……あ、奈々子」
「え、奈々子? ……っ!」
バサッ!
大樹のひざの上から、雑誌が落ちた。