今すぐぎゅっと、だきしめて。





結局、三人で駅前のアイスクリーム屋さんに行った。


「ってゆーかさ、こうして三人で過ごす夏休みも、もうこれが最後かもしれないんだよね…」


カップに入ったカラフルなアイスを頬張りながら奈々子が呟いた。


「……そうだね、来年はみんな別々の高校だもんね」

「大樹、あんた他県の学校なんでしょ?」


あたしを挟んで座っている大樹を奈々子は覗き込んだ。


「んー。 他県っつっても隣だし? 電車に一時間も乗れば着くし」


大樹はすでに食べ終わった空のカップを足元に置いた。



そうだ…
サッカーが上手な大樹はすでに推薦が決まっているんだ。

奈々子は奈々子で、将来服を作る仕事がしたいらしく自分のやりたい事をしっかり見据えて、学校も選んでいる。

みんな、確実に大人へと向かってる。


なのに…あたしは……






いつまでも、ずっと続くと思っていたこの関係。

あたしはあたり前のように、奈々子は同じ高校に行って、ずっと一緒にいると思っていた。
大樹とだってそうだ。

告白されるまで、離れ離れになるなんて思いもしなかった。
こうして、小学校の頃から三人でいたのに。


これが「最後」になってしまうかと思うと、なんだか今が貴重に思える。




「ユイは?」

「え?」


大樹は、伸ばした足を組んであたしを見た。


……あたし?



あたしは、何もない。
特にやりたい事も。



自分が見えないんだ。


ただ、今が楽しければいいって
笑って過ごせたらって。

そう思う。







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