今すぐぎゅっと、だきしめて。

え?



「えーっと……3月のはじめの週だけど……」



あたしは首を傾げた。



ちぃちゃん……そんな事聞いてどうするつもりかな。




てゆか、ちぃちゃんはどこの高校だっけ?
いつも見かけるちぃちゃんは、キレイ目のワンピとかで。


制服姿ってあんまり見た事ないんだよなー……。




「そっか。 で、受けたのって、たしかT大付属高校だったよね?」


「え? うん。そうだけど……どうして?」




あたしの成績では、結構目標高くて。

本当に必死に勉強した。



この15年間で、本当に。



ちぃちゃんはあたしの質問には答えずに、口元を緩めると、



「合格してるよ! きっと」



そう言って、手をふってさっさと帰ってしまった。





え。


なに?



それが言いたかったの? ちぃちゃん。



あたしはちぃちゃんが消えて行ったお隣の玄関を見つめたまま。
暫く動けないでいた。




ほんと、最近意味がわかんないんですけどー……。



肌を刺すような冷たい風が、頬を掠めた。
空はもうすでに紺色で、星が瞬き始めている。


「うー、さむっ」


あたしはブルッと身震いをして、もう一度ちぃちゃんの明かりのついた部屋を見上げてから、慌てて家の中に飛び込んだ。




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